昨日の『ザ・ノンフィクション』は、「ちゃんと生きたい!〜這い上がりたい男と女の物語〜」で、バンコクのカオサンでホームレスをやっている日本人がバンコクで働き出すまでのドキュメンタリーだった。昔、2年ほどバンコクを行ったり来たりしていた私にとっては懐かしい景色ばかりで、知っている人も何人か出てきたこともあり、すっかり忘れていたバンコクのことを思い出した。
昨日の番組に出てきたふくちゃんはひきこもりの海外脱出組で、いわゆる外こもりというやつだったのだけど、お金に困った末にカオサンでホームレスをやっていたが、日本の親戚の金銭援助をきっかけに家を確保しバンコクで働き出す話だった。
こうやって番組でふくちゃんだけを取り上げていると彼がとても異質な人に見えるけど、バンコクって昔からふくちゃんのような日本人がたくさんいて、トヨタの住込みの期間工を半年したらそのお金でカオサンで1年ゆっくり過ごす生活を繰り返している人とか、日本人相手に詐欺紛いのことをして日銭を稼いでいる日本人とか、私がバンコクで生活している頃からどうしょうもない人が山ほどいた。
どうしてそういった日本人がバンコクに集まるのかは、なんとなく分かる。タイ人は日本人と気質が似ているけれど、日本人より細かいことは気にせずとても大らか。昔の日本人ってこんな感じだったんじゃないのかなと勝手に思っている。よくいわれるけど、タイも日本も戦時中に侵略されなかった国なので、そのへんも関係あるのかもしれない。まあそんなこともあって、日本じゃ人に合わせられない人がタイなら平気ってことでタイにやってくるのはすごーくよく分かる。
ただ、私はいつ頃か忘れてしまったのだけど、タイのいい加減さにちょっとうんざりするようになりいつの間にか行かなくなってしまった。それまではタイ語をマスターしていつかはタイで働こうと本気で思っていたし、タイの大学内にある語学学校への留学も考えていたのに。たぶん、やっぱり自分は日本で育った日本人で、日本が一番合うってことに気づいたのかなと思う。
バンコクと日本を行ったり来たりしている時、バンコクに住んでたり私と同じようにバンコクと日本の往復している友達がたくさんできた。転勤で来たバンコクにすっかりはまってしまい海外勤務が終了しても帰国するのを拒否して退職、そのままバンコクで会社を立ち上げタイ人の愛人と暮らしている人や(この人は愛人に家を買った後に行方不明になったので愛人に殺されたのではないかと思っている)、タイの風俗で水揚げした女性と結婚し日本で新居を構えたけれど、タイの風俗の良さが忘れられず奥さんに隠れて毎週末バンコクにやってきてる人とか、書き切れないほどの友達がいたのだけど、全員音信不通になってしまった。タイでも日本でもしょっちゅう会っていたし、当時バンコクでは高価だった携帯電話をシェアしたりもしていたので、友達だと思っているのは私だけじゃなかったと思うのだけど、本当にみんな綺麗さっぱり消えてしまった。
昨日の番組のふくちゃんを見て、「仕事が見つかったと言ったっていつまでもこのままじゃいられないだろ」と思った。タイで日本と同じくらい稼ぐことは駐在員以外は難しいし、タイの相場程度の給料を貰うことが出来たとしても日本の年金すら収められない。日本の様な社会保障もないし、医療も発達していない。現実的に考えて日本人がタイで生活を成り立たせるのはとても難しい。
私も友達もそれに気づいてタイから卒業(←この言い方はちょっと恥ずかしいが他に当てはまるのがないので仕方無く使います)したのかなあと思う。ふくちゃんはタイから卒業するのかどうかは分からないけれど、ふくちゃんがもしタイから離れずにタイに住み続けるのならぜひ今後を見守ってみたい。頭のいい人には見えなかったけど、タイでホームレスするくらいの根性があるなら、タイで出家してでもタイに住み続けるくらいの根性を見せてくれることをちょっとだけ期待している。